僕が勤務している会社では、ここ数年の間に生産性向上を目的としてカイゼンに取り組んでいる。カイゼンといえば日本の豊田自動車が世界のトヨタになる原動力になった活動という認識だ。しかし今、僕の会社ではカイゼンのおかげで社員が長時間労働を強いられるという本末転倒な事態が発生している。
弊社のカイゼン
僕の勤める会社は数年前からトヨタに勤務していたおじいちゃんを外部から顧問として招き、全員参加とぶち上げてカイゼン活動を行っている。しかしながらそのやり方があまりに性急過ぎて現場が疲弊してしまっている。
「カイゼンしたのに楽にならない」「カイゼンのせいで仕事がおかしくなった」なんて声がちょいちょい聞こえてくる。
カイゼンとはもちろん改善であり、善く改めると書く。しかし弊社のカイゼンはその三段下を行ってしまっている。斜め上のほうがまだいい。
カイゼンがまねく残業
なぜこんなことになってしまったのか。自分なり分析すると以下の二つかと考えている。
1.やり方が性急すぎる
顧問のおじいちゃん曰く「カイゼンは現状を否定することから始まる」だそうだが、今まで野球をやっていた人間に対して、いきなりセパタクローをやれというくらい現状を否定しまくる。否定しすぎでしょ。せめてソフトボールくらいにしてあげなよ。
習慣化でも触れたが人間の脳は急激な変化を嫌がる性質を持っている。それを無視して今までのやり方から急激に変えすぎたというのが最大の失敗ではないか
2.成果を求めすぎる
弊社の経営層はカイゼンに夢を見すぎている。カイゼンは何でも解決する魔法の杖だとでも思っているのだろうか。問題が起こるたびに「カイゼン」「カイゼン」を連呼する。そしてカイゼンを導入した成果発表や指導会を開く。しかしこれは社内向けであり何ら稼ぎを出すものではない。むしろそこで指導という体の公開処刑の場と化している。そのため指導されないように時間をかけてプレゼン資料を作成する。それで済むのならともかく、事前のレクでプレゼンを全否定されて資料を作り直す羽目になる。
人のモチベーションを上げるのは、自分が仕事をコントロールしている感覚と前に進んでいる感覚である。それを社長が自らぶち壊しているのである。もうここまで行くと、哀れな裸の王様にしか見えない。
本当のカイゼンは人を幸せにするのでは?
こんな風に弊社のカイゼンは既に迷走しており、改善ではなくなっている。
「カイゼンを辞めるのが最大のカイゼン」と自虐ネタが聞こえてくる有様だ。
結局のところ、弊社のカイゼンはカイゼンごっこになってしまっている。誰も幸せになっていない。楽に、しかし成果は落とさずが真のカイゼンだと思っている。
いつか弊社の社長がこの事実に気づいてくれることを切に願う。